彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「すでに電柱の角にあいつがいたからな。せっかくだからひとことご挨拶して帰っていただいた方がいいと判断した」

 驚いた。先生、本当に私のこと心配してくれているんだ。

「ご迷惑おかけしてすみません」

「全くだ。走れば大丈夫だの、防犯ブザーがあれば平気だとか、僕の言うことをちっとも守らない。困った婚約者だ。反省しなさい」

「そんな!」

「さあ、帰るぞ」

 先生は私の手をとるとすたすたと歩きだした。何事もなかったかのように手を繋ぐってどういうこと?!

「あ、あの……手……」

「ん、なんだ?手を繋ぐのは婚約者がよくやることだよな。問題はないはずだが、何か?」

 先生はもしかしていつも私を見ていたんだろうか。

「先生」

「なんだ?」

「もしかして、私ひとりの時って今までもタクシー使ってないの知ってました?」

「知ってるよ」

「そうでしたか……それじゃ、もしかして……」

「そうだな。忙しい中をやりくりして抜け出して水世を後ろから見ていた」

「えー!言ってくれればいいのに……」
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