彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「言ったところで水世は強情だろ。昔と同じで相変わらず言うことを聞かない。でも実はあいつらが見ているとわかれば、委縮しすぎて生活自体が恐怖で送れなくなりそうだ。それでは同居生活も楽しくないし、可哀そうだからな」

 先生は私の手をぎゅっと握った。

「まあ、こうやって僕が手を握っているうちは大丈夫だ。それにもう少ししたらなんとかする」

 なんとかするって言ったって、相手が普通の人じゃない。先生が心配だ。

「先生に何かあったらどうするんです?だめですよ、やっぱり……」

「まあ、蛇の道は蛇と言ってね。加害者弁護をするようになって僕も顔が売れてね。あちらもどういうわけだかああいう手合いも敬意を払ってくれるようになった。やりようはあるんだよ。元々君のお父さんは仮釈放後借金なんてしていない」

「え!じゃあなんで?」

「以前のことを利用されてるんだよ」

「利用……」

「まあ、大丈夫。僕がいるじゃないか」

「先生、まるで王子様みたいですよ。私の危ないところにさっと現れて、僕がいるとか言っちゃって……」

 私はおかしくなってくすくす笑ってしまった。

「王子様……悪魔じゃない?」

「もちろんですよ。白馬の王子です!」

「それはいいな。SNSで僕は白馬の王子だと流してくれ」

「でも、問題が解決すればその王子様も見られなくなりそうで少し残念です」

 先生は急に立ち止まった。
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