彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「言っておくが婚約した以上結婚する」

「え?」

「僕は弁護士だから嘘はつかない」

 こちらを見てにこりとした。

「あ、あの……先生、こんな大事なことをふざけたらだめですよ」

「ふざけてない。大真面目だ」

 先生はまた前を見て歩き出した。駅に着いたが、先生は改札へ行かない。

「先生?」

「面倒だ、タクシーで帰ろう」

 そう言うと、手を繋いだままタクシー乗り場に並んだ。

「せっかく駅まで来たのに、どうして……」

「改札を通るときに手を繋げないからな。面倒だからこのままにしよう」

 そう言って手をまたぎゅっと握った。先生、どういうこと?私は勘違いしそうだった。

 帰るとコンシェルジュの人が出迎えてくれた。

「先生、おかえりなさい。最近は水世さんが先に郵便物とかを受け取ってくれるから僕らも楽になりましたよ」

「そうかい?」

「お二人……お似合いですね」

「そうだろ?」
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