彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「は?」

 私は先生を見てあっけにとられると、また手をぎゅっと握ってエレベーターホールへ先生は歩き出した。

「なんかいいな……これが婚約生活か。悪くない……」

「先生って、恋人を部屋に入れたりされたことないんですか?」

「ない」

 真面目な顔で即答された。びっくりした。こんなにイケメンで有能なのに、相変わらず恋人がいない?どういうことなの?

「加害者弁護をやり始めたから縁談もなくなった。前以上に恋愛なんてできないんだよ。悪魔の黒王子の恋人なんてなりたがるわけない」

「へんなの……先生こんなに優しくてスーパーマンなのに……」

「そうか?そんなこと言ってくれるのは婚約者の水世だけだな」

 部屋に入った。

「簡単なものですがよろしければ先生の夕飯作ります。私の分を作るのも手間は同じなのでいいですか?」

「ああ、それじゃお言葉に甘えるとしようか、婚約者殿」

「おまかせください。これでも料理は得意なんです」

「忘れてないよな?僕は人参としいたけ、それとセロリとなすが嫌いだ」

「……先生、そっちはちっとも成長してませんね」

「成長?別に食べなくても成長している」

 捨て台詞のように言うと自室へ入っていく。
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