彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「なんだっけな?人参としいたけと確かピーマンとキャベツだっけ?」

 すると、声がした。

「ああ、キャベツは大丈夫だが、生は嫌いだ。実はピーマンもあまり好きじゃない」

「はあ?」

「大丈夫だ。それ以外の食べられる食品はたくさんある。たまに食べられないものがあるが、それは残すから気にするな」

 部屋から出てきた先生はシャワーを浴びてくると言っていなくなった。

「なんなの……食生活だけ子供みたいじゃない?」

 私は急いで手を洗いエプロンをして冷蔵庫を見てすぐに食事作りにとりかかった。

 テーブルに並べ終わるころ、いい匂いだと言いながら先生が私室から出てきた。

「うん、美味しい」

 先生は黙々と食べている。普通の肉野菜炒めだが、人参を入れないという選択肢はいろどりに大きな影響がある。冷ややっことみそ汁。作り置きのきんぴら。人参が入っているが、先生は避けて食べている。

「お口に合ったようでよかったです。たいしたものじゃないですけど……」

「すごい速さで作れるんだな。びっくりしたぞ」

「先生……あの、さっき言ってた結婚のはなしですけど……私、先生が解決してくれたら家を借ります」

「どうして?」

「どうしてって当たり前ですよ!いつまでもお世話になるわけにはいきません。結婚は本当に好きな人として下さい。それに、私は加害者家族なので結婚は諦めているんです」

「……諦めているってどういう意味だ」
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