彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 先生はもう一度私を抱き寄せると深いキスをしかけた。しばらく角度を変えて何度もむさぼるようにお互いキスをしていた。唇を離すと糸をひいて、先生は私の唇を親指でなぞった。

「佳穂」

 先生は引き出しから小さな箱を出して、それを開けた。中には中央に石のついたいわゆる婚約指輪が入っていた。

「先生、これ……」

「準備してあったんだ。ようやく渡せる。左手を出して」

 先生は私の左手の薬指にその指輪をはめた。何故かぴったりだった。

「どうしてぴったりなの?」

「君がうちに来た夜、ベッドで寝る君の指のサイズを図った」

「すごく綺麗です。本当に頂いていいんですか?」

「もちろんだ。婚約しているんだから外さないように……」

「ありがとうございます」

 翌朝。

 プロポーズのことがあって、私は少し早めに目が覚めた。冷蔵庫の中にある材料で軽い朝食を作った。時間なので先生を起こしに部屋へ行った。

 仕事の時の様にノックをする。返事がない。鍵がかかっていなかったので、そっと部屋へ入った。

 遮光カーテンのせいで薄暗い部屋の中、ベッドに進む。先生の顔を近くで見るために私はついしゃがんでしまった。
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