彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
 それから10年。あの時の子が先生の所で法律を勉強していると聞いて、なんだか嬉しかった。

 大学三年生だった彼女は一か月程度うちへインターンに来た。久しぶりに会ったが、驚くほど美しく綺麗になった。とくに長い黒髪が美しく、目を奪われた。

 他にも数名一緒に来ていたが、学生は特にいつも厳しく指導していた。うちにインターンへ来れば就職できると思い込む学生が多すぎて、最初から手加減しないで接するとその後就職を希望しない子がほとんどになった。

 水世はとても貪欲で、少しくらいきつく𠮟られてもめげなかった。そして、僕に質問はするし、間違っていると思うことは言い返してきた。とても驚いた。

 中学生の頃のおどおどした彼女はどこにもいなかった。僕は彼女には卒業後働いてもらってもいいかもしれないと思っていたのに、就活に来なかった。

 でも三峰先生の助手になったと聞いて、それもありだと思った。加害者家族の彼女にとって、就職も鬼門だったのだろうとわかったからだ。

 先生のパーティーで久しぶりに再会し、野田事務所の所長に加害者弁護について拒絶されている姿を見て黙っていられなかった。彼女にうちへ面接に来るよう仕向けた。

 ところが、三峰先生からの電話で彼女の窮状を知った。その後、彼女のことを先生と話し合った。

「彼女をうちで雇いましょう。そして僕のところで闇金から守ります」

「本当にいいの?すでに連中が押し寄せてきているから何らかのアクションが事務所にあるかもしれないわよ」

「それは大丈夫です。すでに色々あったのでこちらもやり方はわかってきています。そちらの解決もお任せください」

「黒羽君、思ったよりきっと大変よ。大丈夫なの?」

「実は水世はインターンのときから優秀で根性があるので目を付けていました。今回先生の紹介で彼女の問題を解決するためにうちで預かるのではなく、きちんと働いてもらうためにも採用面接をします。あくまでお父さんの借金のことと彼女の採用は関係ないと思わせないとダメなんです」
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