彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「確かにその通りだわ。私も考えなしだったわね。その方が彼女自身を見て採用してくれたんだと思えるから、事務所へ入っても頑張れるかもしれないわね」
「彼女ならうちで戦力になると思います。お母さんまで早くに亡くして、彼女は本当に大変だったでしょう。うちに来たらできるだけ守ってやりたい」
それから彼女の面接日になった。思わぬアクシデントもあったが、かえって彼女の本質を見ることができた。
実は再会したときから、彼女と声を交わしたときから、彼女をずっと側に置くにはどうしたらいいだろうかと考え始めていた。取り立て屋が彼女の周りに姿を現したと聞いて、彼女を守るためにあのマンションで婚約者として同居しようと決心した。
このマンションは配偶者には権限を委譲しやすい。それで思いついた方法が婚約者だった。彼女は同居の為、婚約者となることをしぶしぶ認めてくれた。彼女の驚いた顔を見た時になぜか嬉しかったのを覚えている。
三峰先生にはすぐに連絡した。
「彼女ですが、僕のマンションで同居させます」
「本気なの?あなた、正直女性を遠ざけているところがあるじゃないの。そういうの嫌なんじゃなかった?」
「先生に頼まれた子ですし、きちんと守るにはそれがいいでしょう」
「わかりました。私も彼女の周辺を説得するわ。あなたのような独身イケメンと同居とか、普通のご家族なら警戒するわよ」
「私のことをよくご存じの先生が説得してくだされば大丈夫でしょう」
「どうしちゃったの……黒羽君……いつもと違うわね。何考えてるの?」
「まあ、任せてください。あ、彼女は婚約者ということでマンションには説明します」
「今、婚約者って言った?!」
「まあ、お任せください」