彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
そう言って僕は先に電話を切った。先生が驚いている顔が目に浮かんだ。
数日後のことだ。
「先生、闇金らしき人がうちをそこの角から見てました」
外出から戻った池田が私に報告へ来た。
「そうか。早速来たな」
池田は眼鏡を押さえながら言った。
「先生に言われた通り、水世さんには外に行く仕事はさせてません。朝は駅から直通ですし、何も絡まれてないようですけどね」
「彼女がうちで働き出したと知ったから手を出してこないんだよ」
「なるほど……」
「まあ、あそこの弁護もしたことがあるから、彼女が僕の庇護に入ったとわかれば、さすがに手は出せないだろう。あちらもうちと喧嘩はしたくないはずだ」
「それもそうですけど、先生が怖いんですよ。コテンパンにするからなあ。気を付けてくださいよ。僕は彼女より先生が心配です」
「まあ、あの時みたいに怪我をしないようにやるから大丈夫だ。さすがの僕も学んだからね。そのうち直接行って解決してくるよ」
「おひとりで行くんですか?」
「池田も行ってくれるのか?」
にやりとして見たら、両手を目の前で振り出した。
「いやいや、僕は行きませんよ!可愛い奥さんがいるんですから、ケガするわけにも死ぬわけにもいかないんです」
「そうか。僕だって婚約者がいるんだけどな」