彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「だから、その婚約者のために身体をはるんでしょ。さすが先生。危ないなら川口先生も連れて行くか、警察に連絡しましょう」
「そうだな」
「池田君」
「はい?」
「佐々木さんは意地悪ばかり言ってくるんだが、君はどうして水世を僕の婚約者としたことに何もいってこないんだ?」
池田はにやりと笑った。
「先生と何年一緒にいると思っているんですか?佐々木さんが来る前から先生を見てきたんです。クビにならないのは、先生を知っているからですよ。先生が以前話していた中学生って彼女でしょう。三峰先生に聞いてすぐわかりました。それに女性から逃げてきた先生が初めて選んだ人です。僕は応援するのみですよ」
「君……」
まさか僕の考えがわかっているのか。
「ま、ライバルにお気をつけください。先手必勝ですよ。婚約は婚約でしかない。結婚しないとダメです。僕もそうでしたからね」
「池田君。君が頼りになると思う日が来るとは驚きだ」
どや顔でこちらを見る池田。
「そうでしょう。いつでも聞いてください。恋愛について教えますからね」
「確かに、僕の周りで結婚が続いているのは君だけだ。まだ二年だけどな」
「先生……ほんと、それだから黒王子なんですよ。ひとこと余計です……まったくもう……」
生活を共にすればするほど、彼女をどんどん好きになっていった。どうやってプロポーズしたらいいかと悩み始めたころだった。
彼女の幼馴染という男が電話をかけてきた。佳穂には内緒にしてくれという。
近くの喫茶店で会った。畑でとれたブドウを手土産に持ってきていた。
佳穂との関係を説明された。僕は彼女のことを事件当時から知っていたが、彼には黙っていた。彼は佳穂と出会ってから彼女を守ってきたこと、いずれ彼女と結婚するつもりだから、それまで彼女を守ってほしいと頼まれた。
それを聞いて危機感が増した。ライバルがいるとわかったのだ。彼は同居の意味をわかっていて、僕を確認しに来たのだ。そして宣戦布告してきた。
もう手段を選んではいられないと思った。