彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ごそごそしてすみませんでした。うるさかったですか?」

「食いしん坊だから、夜中に何か物色して食べているんだろうと思ったんだ。見たら可哀そうだから知らぬふりして仕事していたんだぞ」

 相変わらずの意地悪全開。婚約者の甘さはどこにも見られない。

 私は部屋に戻って自分のお弁当を食べていたら、先生が出てきた。

 手にはお盆が乗っていた。

「おにぎりも、スープも旨かった。ありがとう」

「先生のお口に合ったようで良かったです」

「水世の手作りだとしても、おにぎりでさすがに失敗はないだろう」

「失礼な。私は母がいないとき家事をしてきましたから料理は割と得意なんです」

「ほう。それなら夜にぜひ違うものを作ってくれ」

「何がいいですか?先生は好き嫌い多いですよね」

「ハンバーグだ」

「ハンバーグ?また?」

 この間も夕飯にハンバーグをリクエストされて作った。確かに美味しいと喜んでくれていた。

「だめなのか?何がいいと言うから言ったまでだ。ちなみにトマトソースがいい。上にチーズも乗せてくれ。ポテトもあるとなおいい。おにぎりは今度明太子にしてくれ」

「驚くほど具体的ですね」

「まあな。苦手なものを出されるくらいなら詳しく指定したほうがいい。ちなみに甘くない出し巻き卵も大好きだ」
< 69 / 141 >

この作品をシェア

pagetop