彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「クビか……ま、先生もお歳だからな。そろそろゆっくりしたいんだろう。本当はクビにしたいわけじゃないだろうからそう言うなよ」

 黒羽先生は私を見て嬉しそうに笑っていた。久しぶりに見たがまぶしいほどの美男だ。実は先生から黒羽先生のところに行ってみたらどうかと言われていた。でも、インターンの時の厳しさが忘れられず、逃げていたのだ。

「それで……?野田事務所じゃなければどこに行くつもりだったんだ?お前のやりたいことは前と変わってないんじゃないのか?」

 チロリと先生は私を見た。わかっていて言っている。相変わらずだ。だから先生が苦手なのに……。

「先生大変じゃないんですか?」

「何が?」

「加害者弁護ですよ。本当に始められたんですね」

「お前がいる間は準備やら反対勢力もあってなかなかできなかったが、ようやく少しづつだが始めたよ」

 先生はいずれやると言っていたが、本当に始めるとは思っていなかった。事務所内で反対意見も多かったからだ。それより心配なのは世論だ。先生はイケメンで一度加害者弁護のことでテレビなどで取り上げられてから、批判的に言う人達に攻撃されている。最近は悪魔の黒王子と呼ばれてしまっている。加害者弁護をする人は悪い人の味方だと間違ったことを言う人達がいるのだ。
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