彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「要するに、その彼女に諦めてもらえばいいんですか?それなら恋人のふりとかでもいいんじゃありませんか?」

「いや、恋人なんかいたとしても彼女の親も昔から乗り気で諦めるようなタイプじゃないんだよ。でも結婚していれば諦めるはずだ。僕も君を守るため戸籍に入れる。どうだ?」

 私はため息をついた。

「先生、水世でなくなることで私にはかなりのメリットがあるのはわかります。でもそうなると先生にも迷惑がかかる。そこまでして先生に結婚する意味ありますか?私は加害者家族ですし、先生のご家族は私を戸籍に入れることはお仕事の関係から考えても絶対反対されます」

「別に大丈夫だ。僕の仕事をよく知っている家族がそんな理由で反対などしたら、僕の仕事や生き方にケチをつけたも同然だ。結婚は親の承諾はいらないから別に構わない。とりあえず急いで籍を入れて、あいつらを牽制する。そして君の問題を解決してから安心して渡米したいんだ」

 先生の考え方は結婚や恋愛に大事な部分が欠けている。話を聞いている限り、契約結婚しかできそうにないのだ。仕事の為とか私の為とか言いながら、結局は条件ありきでしかないということに気づいていないんだろうか。

「先生は一番大事な部分が抜けています。結婚するのに、私達には愛がありません!」

 先生も私を正面から見据えた。

「僕は長い間、仕事で色々な離婚を見てきた。愛はあっても、実は相性が悪いだの、食が合わないだの、金の使い方が合わないとか……僕らには愛がなくてもそれ以外はある。何しろ、君は僕の偏食を知っている。仕事のこともインターンの時から見ていてすでに熟知している。それに、君を妻にすれば僕の弁護士秘書を探す必要は二度となくなる。いいことずくめだろう」

 何がいいことずくめよ。やっぱり……。思った通りだった。
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