彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「先生。もし、父のことがきちんと片付いて、先生の縁談相手であるお嬢さんが諦めてくれたら、私達って結婚する意味はないですよね?」
「それはどうだろう?別れたらまた縁談が来るにきまっている。いちいち面倒くさい」
「面倒くさいって何ですか?先生に私よりもずっとぴったりの素敵な女性もいますよ。以前から思っていたんですが、先生はどうして縁談に前向きじゃないんですか?彼女もいないし……」
「別に、いい人がいなかっただけだ」
絶対嘘だ。その気がない。
先生は頑固だ。言い出したら人の忠告はほとんど聞かない。それに私の為だと言われたら何も言い返せない。私はため息をついた。
考えてみれば、私は普通の恋愛結婚なんて望めない。佑でさえ、お母さんを説得できずいまだにあのままだ。とりあえず、先生がいいというまで今の話のとおり契約を結んで結婚をする。そして、問題が解決したら離婚したらいいのかもしれない。
少なくともさっきの話だとアメリカから戻られたら全て解決していそうだ。契約にそれを盛り込んでもらえば問題ない。私は思い切って先生に提案した。
「私の父の問題が解決して、先生のアメリカ出張が終わってから、縁談も消えたら、その後話し合って離婚もできるようにしましょう。その内容で婚前契約書を交わしてもいいですか?いわゆる契約結婚です」
「しょうがないな……わかった。でも離婚はお互い話し合って承諾した場合のみだぞ」
「わかりました。でも……先生こそ本当にいいんですか?」
「いいに決まってる。僕がプロポーズしたんだぞ」
そう言うと、先生は忙しいからと言って私を部屋から出した。