彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

 翌日。

 婚姻届を持ってきた先生は自分が記入した後、私に記入させた。

「さてと、証人を二人に頼むとしよう」

 そう言うと、佐々木さんと池田さんに突然私と契約結婚をするので、証人になってほしいとふたりに頭を下げた。

「「は?えー!!」」

 ふたりは驚いたんだろう、ガタンと音を立てて立ち上がった。

「婚約者設定は本気だったんですね……良かった……」

 佐々木さんが笑った。先生は私をじろりとにらんだので、とりあえず黙った。先生は佐々木さんを正面から見て言った。

「結婚することが一番お互いにとってメリットがあると判断した」

 メリットってまたそういう説明……絶対よくないような気がする。案の定、佐々木さんが先生をにらんだ。

「メリットって……先生、まさか……」

 バンと机を叩いた佐々木さんは先生にかみついた。

「先生、言うに事欠いてそれはないんじゃありませんか」

 うんうんと頷いて池田さんも言った。

「先生らしいと言えばそうですけどねえ……その言い方は水世さんがあんまりにも可哀そうですよ」

「佐々木さん。君は離婚経験者だ。しかもその手の案件を手掛けている。君はクライアントになんて最近言っている?愛より条件、愛より金……事前に契約書を交わす結婚が最もお勧めだと言っていなかったかな?」

「先生、その言い方は卑怯ですよ!私自身の経験を説明しただけで関係ありません。それはそれ、これはこれですよ!」
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