彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「僕のアメリカ出張中、君を貸してほしいと言うんだよ」
「ええ?!」
「理由を聞いたら断れなかった。諒介の秘書の山田さんのつわりがひどいらしい。ひと月代わってもらえたら助かるというので、断れなかった。山田さんのことを僕もよく知っているからね」
それは大変だろう。女性として応援するべきだから役に立てるならお礼の意味もあるから受けようと思った。
「わかりました。私がどこまでお役に立てるかわかりませんが、頑張ってみます。先生と違って川口先生は根が優しいですからね」
「だめだぞ。そういうことを言っているとあいつの罠にかかる。仮にも君は僕の妻なんだからな」
「わかってますよ……先生がアメリカから戻られるまでは契約続行中です。偽妻としてきちんとします」
「偽とはなんだ、本妻だ!」
川口先生の秘書もとなると、結局は先生の仕事も並行するので忙しくなるだろう。
佐々木さんと池田さんが帰った後、先生が外出先から戻るまで明日からの先生のスケジューリングを見直していた。
私は先生のスケジュールを入れる前と入れた後で必ず時間の修正やその目的を先生に聞いて記入しておく。先生の考えをスケジュールに書いておく方が、時間通りに進むことが多いからだ。
「なるほど……君は用意周到だな。いつも僕に聞いてくるまでに自分で何かしら準備をしていると思ったがそういうことなんだな」
驚いて顔を上げると私の後ろから机の上を覗いていた。
「あ、先生……お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま」
「あの……」