彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ちょっとこっちへ来なさい」
先生の部屋に入ると、先生の椅子に座らされた。先生がパソコンに自分の詳しいスケジュールを出した。見て驚いた。私が使っている表とは違う。
「これって……」
「佐々木さんや前の秘書が使っていたスケジューラーをさらに僕なりに最近改良した。あちらに行くので日本のスケジュールとアメリカでのスケジュールを一度に見られるように作り替えたんだ」
「すごい……」
両国の時差を考えて時間軸ごとに細かく設定されている。やるべきことや相手に言うことまで時間ごとに詳しく書いてある。本当に先生って細かい。
「君とはここまでを共有する」
「え!?」
「単なるスケジュールだけでなく、僕の頭の中にあるものも把握してもらうためだ。スケジューリングに対する僕の考えを知りたいんだろう。それなら僕もつつみ隠さず全部見せた方がいいだろう。これを君が把握できればすべてを任せることが出来るようになるだろう」
先生はそれを見ながらどういう風にアポイントを入れてほしいとか、こういう時はこのくらい時間が欲しいとか、わかりやすく事前に教えてくれた。とてもわかりやすかった。先生は黙ってメモを取っている私のことをじいっと見ていた。
「あの?」
「いや、前からずっと思っていたが、佳穂はとても丁寧だな」
「え?普通だと思いますが……」