彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「皆さんが思うようなことは何も起きません。それに、川口先生のいらっしゃらない時間はこちらに来ているつもりです」
「それはどうだろうね。この間も裁判所内で迷っていた水世ちゃんをエスコートして連れ帰ってきたのは諒介先生よ」
先生は私をにらんでる。
「水世、浮気は慰謝料を請求するぞ。でも絶対別れないけどな」
「ぷっ、あはは……」
佐々木さんと池田さんは笑い出した。
「もう、変なこと言わないでください」
夕方、先生は川口先生のところに私を連れて行った。川口先生は白王子、黒羽先生は黒王子と言われていたそうだ。川口先生は二重の大きな目が特徴的。すらっとした長身の先生だ。そしてとても口がうまい。なんというか、黒羽先生の毒舌とは全く違い、相手を褒め殺しにする。
毒舌が得意の黒羽先生と対になる存在だ。
「諒介、ちょっといいか」
「ああ、そっちで……水世ちゃん、いらっしゃい」
「はい。お忙しいのにすみません」
先生の個室に入り、ソファへ座った。川口先生の秘書も来たが、黒羽先生がしばらくの間誰も入れないで三人にしてほしいと頼んだので出て行った。
「明日からしばらくの間……彼女を頼む」
「そういうことね」
「川口先生、先日は私の為にお骨折り頂いたそうでありがとうございました」