彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「うん。だから明日から僕のことを頼むね。出来る範囲で構わないからね」
「はい。お役に立てるかどうかはわかりませんが頑張ります」
「櫂とあそこの連中には釘を刺してきたけど、櫂がいないとわかって動き出す可能性もあるから、夜は気を付けて」
「はい。でも大丈夫です」
「そうだね、大丈夫ならいいんだよ。誰か知らない人から電話が来たり、お父さんのことを聞かれたら僕に言ってね」
「わかりました。すみません、先生」
「いや、それは大丈夫だから気にしないでね」
「諒介」
「なんだよ」
「佳穂は僕の妻だからな」
「何が妻だ。どうせ契約結婚だろ。お前、今回の出張でリンダさんと縁談が決まりそうだから彼女を利用したくせに、よく言うわ」
「川口先生。いいんです、私も黒羽先生には助けてもらいましたから今度は私がお役に立つ番です」
「水世ちゃんがいいなら僕に文句はないよ。櫂は女性も食べ物と一緒で好き嫌いが激しいんだ」
私はおかしくて噴出してしまった。
「諒介、お前……その言い方はなんだ」
「まあ、仮でもさ、好き嫌いの激しいお前と一緒に暮らせそうな人が見つかって良かったな、櫂。せいぜい出張行っている間に彼女の心がどこかにいかないように、忙しくても時差があっても毎日電話でもするんだな」
「言われるまでもない。諒介頼んだぞ」