彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「ああ、彼女のことは守るよ」
「じゃあ、水世ちゃん。明日から櫂の案件もやるので、それは水世ちゃんが担当だよ。ああ、楽しみだな」
「え?」
「何が楽しみだ。ふざけるなよ。お前、蛍のこときちんとしろよ」
川口先生は顔色が変わった。蛍とは黒羽先生の妹さん。諒介先生の離婚後、付き合ったり、別れたりを繰り返しているらしい。
「ま、それはおいおい、ね」
「何がおいおいだ。僕のことをいじるなんて許さんぞ」
「わかったよ。そろそろ来客だ。じゃあね、水世ちゃん。週明けから楽しみにしてるよ」
「はい。よろしくお願いします」
その日の夜……先生は私を寝室に呼んだ。
「どうしたんですか?」
先生は私の顔を見て、手を引いた。そしてベッドの上に並んで腰かけた。
「佳穂」
「はい」
先生は私の手を握った。そして顔を見た。
「諒介はバツイチだ。でも今独身だ。僕の親友だから、僕から君を奪ったりはしないと思うが、何があるかわからないのが男女の仲だ。仕事でもそういうのを大勢見てきた」
「私なら大丈夫です」