彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

 先生は私のおでこをピンッと軽くはじいた。

「佳穂。大丈夫なのは君だけで、あいつが大丈夫か僕も正直約束できない。ほだされるなよ。仕事のこともそうだ。君は僕のものだ」

 そう言うと私をぎゅっと抱き寄せた。久しぶりに先生の香りに包まれた。

「はい」

「帰国したら、君の祖父母にも挨拶してきちんとしよう」

「え?」

「出張前で君のことの解決や仕事が忙しすぎて挨拶している余裕がなかっただけだぞ。結婚は契約で離婚前提とか言わせないぞ。そのつもりでいろ」

「先生……」

 考えていることがばれている。どうせ、アメリカから戻ってきたら離婚するから両家とも挨拶していないのだろうと思っていた。すると端正な顔が近づいてきて突然唇を奪われた。

「ん……ん……あ……」

「佳穂……これ以上もらうと行きたくなくなりそうだ。帰ってきたらゆっくりもらう。覚悟しておきなさい」

 そう言うと彼は解放してくれた。

 先生は次の日の昼の便で旅立って行った。
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