彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

「それってどういう意味だ?」

「どういう意味でもないです。きちんとやることはやっていますから安心してください。荷物が届いたらコンシェルジュから連絡をもらえるようにしてあるんです」

「とにかく、もうすぐ帰る。よそ見をするなよ」

「なんですかそれ?川口先生はよくしてくださってます。お礼を言ってください」

「よくしてる?いいか、ほだされるなよ」

 そう言って先生の電話は切れた。

 先生が旅立ってあっという間に二週間がたった。

 その日はたまたま川口先生が夕飯に誘ってくださり、一緒に食事を終えた後、黒羽先生のマンションまで送ってくれた。マンションが見えてきた曲がり角で、先生は私を後ろ手に庇った。暗がりからサングラスの男が二人出てきた。私はびっくりして足がすくんだ。

「あれれ……彼氏は出張だったのに、あんた……見た顔だな」

「ああ、この間そちらの代表には話をつけたんだけどな。まだ彼女の周りをうろつく予定なら首を洗って待っていたほうがいいぞ。彼女の夫は妻のことに関してはおそらく手加減しないはずだからな」

「そうか、お前……この間事務所に奴と一緒に来ていた弁護士だな」

「覚えてもらっていたなら光栄だ」

「しょうがねえな、今日はここまでだ」

 そう言うと彼らは黒い車に乗って帰って行った。

「あ、ありがとうございました、先生……」

 川口先生は震えている私を見て、そっと身体を抱き寄せた。黒羽先生と違う香りに私はつい身体を固くした。
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