彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「それは、ほれ、佑君のお父さんが払っておるんじゃろ。うちの分を彼が買い取りたいと、そして、お前と一緒になりたいと言ってるんじゃ」
「それはダメ!私から佑に言っておくから……佑のお母さんに知れたら大変よ」
「でも佑君がお前の為にそうしたいというんだ。覚悟があるようじゃ」
「でも……わかった、佑とは私が話す」
「そうしなさい。明日は佳穂の誕生日じゃないか。佳穂はいくつになる?」
「27歳よ」
「里穂はその頃にはとっくに結婚していたな」
「お母さんは結婚が早かったからでしょ」
堂々巡りがはじまった。その日は私が帰ってきたことがうれしくておじいちゃんはいつも以上にお酒を飲んでしまっていた。結局ぐちゃぐちゃ言いながら、そのまま寝てしまった。
翌朝。下に降りると朝早いおじいちゃんはすでに畑に行く格好だった。私は実家だから周囲の物音がほとんどしなくて静かだったこともあり、寝過ごしてしまった。
「佳穂!そこに誕生日祝いのワインを買っておいた。農協で新しく作った今期のワインだ。持って帰りなさい」
「ありがとう。くれぐれも身体に気を付けて。あ、佑にも向こうのワイン買って来たんだ。そこの棚に入れておくから来た時に渡してくれる?」
「自分で渡しなさい。喜ぶだろうに……」
「いいの。佑も忙しいだろうし、ここへ顔見せた時に渡して。腐らないから大丈夫」
「わかった。でもお爺ちゃん、約束して。畑のことはもう一度相談させて下さい」