彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「来月までじゃ。それまでは待てない」
「わかりました。時間を取ってまた相談に帰るね」
「ああ。身体に気を付けなさい」
「はい」
私はおじいちゃんが畑に出たのを見ると、おじいちゃんの寝室へ向かった。目当ての棚を物色。契約書が入っているであろうと思われる引き出しを探した。なにしろ、教えてくれないなら調べるしかない。
「あった、これだ……」
五年前の借金。500万円!そんなに?でもあの装備だとそうだよね。最近、収穫期の盗難が多くてそのための設備も入れた。前はサルに食べられていたりしたけど、最近は出来上がった果実を人間が盗む。信じられない時代だ。
半分以上残っているということは、おそらく300万円近くあるということ?
私はため息をついた。
「しょうがないな……」
携帯電話のメールが来た。見ると黒羽先生。あさって帰国予定のはずだが、どうしただろう。
「ん?今日の夕方に着く便で戻る?えー!明日って言ってたのに、どういうこと?もう、信じられない。先生の席、書類で埋まってる。まずい早く帰って片付けないと……」
夜には川口先生がイタリアンの有名店を明日の誕生日祝いにと予約してくれていた。本当はそれまでに帰ればいいという計画だった。これじゃ、少し早めに帰って一度事務所に出ないといけない。
駐車場へ行く道を走っていたら、こちらに歩いてくる深く帽子をかぶった作業着姿の男性が見えた。
「おーい、佳穂!俺だよ、おはよう!」