彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「え?佑……どうしたの?おはよう」
研究者なのに畑も手伝っているから顔まで日に焼けている。私がいない間、祖父のことも見てくれたりしてお世話になっている。会うと分かっていればワインを持ってきた。
「お前んとこの爺さんが畑を売ると決めたって言ってたから、佳穂が帰ってくるんじゃないかと思ったら案の定だったな」
「昨日の夜に帰ってきて泊ったんだ。でも、急いでもう帰る。用事が出来てしまったの」
「そうなのか?少し話がしたかったんだ」
「私も話したかった。畑のことよね?」
畑の中に入って、日差しをよけて座った。
「お爺さんの借金のこと聞いたんだな」
「私……借金がまだたくさん残っていたなんて知らなくて、情けないよね」
確認すればよかったのに、自分のことだけですっかり忘れていた。おばあちゃんの入院費を援助すれば何とかなるかと思っていた自分を殴りたい。
「俺もさ、聞いたときびっくりした。お前も保証人になっているんじゃ、また大変だろ。とりあえず、今ある借金は綺麗にした方がいいと思う。畑を売るのは佳穂が嫌だろうから、俺が出来る限り買うと言ったんだ」
「佑だって、そんなお金ないでしょ?うちの畑の為に借金する気?」
「まあ、実家にいたから多少蓄えはある」
「佑にこの畑は必要ないでしょ?」
「俺はお前のこと諦めてないから……いずれ俺が全部買い取るつもりだったよ」
「ダメだよ!」