彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「あ、農協の新しいワインでしょ。ありがとう」
「何だ知ってたのか?もしかしてもう飲んだ?」
「ううん、まだ。あ、爺ちゃんに佑へのお土産預けてきた。いつもの棚に置いてあるから持って行ってね。例の欲しがっていた向こうのワインだから」
「ありがとう。佳穂、真剣に考えろ。お前が借金を払っても、近いうち畑をどうするか考えないといけなくなる。俺のこと嫌いじゃないだろ?」
「もちろんだよ。そうだけど……」
「まあ、いいや。急いでるんだろ?とにかく身の回りに気を付けろよ。送って行きたいが今日は俺も出られない」
「大丈夫よ、車だから問題ないわ」
「何かあったら必ず連絡しろよ。着いたら連絡しろ」
「うん」
佑は手を振りながら山を下りて行った。私は急いで事務所へ戻った。
* * *
「おはようございます!突然おやすみを頂いてしまってすみませんでした」
私は事務所へ入ると目の前のふたりのパラリーガルに頭を下げた。
「あら、今日はおやすみだったのに、どうしたの?」
「そうだよ、明日から鬼先生が帰ってくるから実家へ帰るって言ってたじゃないか」
「それが……佐々木さん達にはメールが来てないんですか?先生、今日の夕方の便で戻るそうなんです」