彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網

「何時の便?」

「それが……書いてないんです」

「相変わらず適当だな。僕らがそういうのを教えないと怒るくせに、自分は適当なんだよ」

「その通りです」

「水世ちゃん。その後、あいつらは来てない?」

 川口先生が心配そうに私を見た。

「ええ、大丈夫です。ありがとうございました」

「なに、また現れたの?諒介先生、片付いたんじゃなかったんですか?」

「そのはずだったんだけどね」

「実は田舎で少し話を聞いてきました。父とは別で、祖父の借金だと思います。私、連帯保証人になっているんです」

「えー?!また借金?何なの?」

「水世ちゃんの周りって、どうしてこう借金だらけなの?」

「でも、その借金は四年前に畑の警備システムなどを入れたものなんです。順調に返済していたはずだったんですけど……昨年の異常気象でうちの畑大分ダメになっていたらしくて……返済が滞って取り立てが現れたようなんです」

「なるほど。とにかく、気を付けるに越したことはない。あとから僕が迎えに行くから、それまでマンションから一歩も出ないようにね」

「はい、よろしくお願いします」

「まあ、ここの片付けはしておいたほうがいいかもね。あいつ綺麗好きだからね」

 川口先生が黒羽先生の机を指さした。

「すぐにやります」

 私はジャケットを脱ぐと腕まくりをして先生の机を片づけを始めたのだった。

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