彼女は渡さない~冷徹弁護士の愛の包囲網
「僕も君のためならまた協力するから、いつでも言って」
「ありがとうございます」
「櫂との契約結婚も続けるかはあいつが戻ってから決めるんだろ?」
先生と契約結婚などしている場合じゃなくなった。お爺ちゃんの借金と畑の問題は避けて通れない。
お爺ちゃんの借金を私が肩代わりするとなれば、いくらかお金を借りて返済するしかない。そして佑が言う通り、お爺ちゃんがひとりで畑をやっていくのもそろそろ難しいのはわかっていた。
畑を誰かに預けるか、売るか決めないといけないのだ。そして佑との関係もこのままではまずい。彼のプロポーズを拒めば、今までの様に私は祖父母のことを彼に甘えるのも無理だ。今後は自分でみないといけない。そうなるとあちらへ戻らねばならない。
先生の所での仕事はもう続けられないかもしれない。もちろん、離婚手続きをすることになるだろう。
「水世ちゃん?」
返事をせず、黙ったままの私を不思議そうに見た先生はつぶやいた。
その時膝の上に置いていた携帯電話が震えはじめた。着信だ。え?黒羽先生だ!
「どうした?出ていいよ」
「すみません……」
私は電話に出た。
「もしもし……」
「佳穂。今どこにいるんだ?」
「えっと、先生……もしかして、もうお戻りだったんですか?」