先生の金魚
プロローグ
ジンジンと肌を刺すような熱。

失明しちゃうんじゃないかってくらいの
鋭い光。

背中を伝って流れる汗。

背中だけならまだ我慢できる。
額にまで滲む汗を今まで何度憎んだか、数えるなんて無謀だ。

夏って苦手。

ううん。
そんな生やさしいものじゃない。

嫌い。
だいっきらい。

どんなに可愛くメイクをしても
ヘアセットに気合を入れても、
夏の猛暑は一瞬で奪い去っていく。

カワイイが一瞬で死ぬ。

夏は大嫌い。

魚だったらよかったのに。

お水の中で優雅に揺蕩って
美しく尾鰭を揺らしてどこまでも泳いでいく。

汗なんて一生知らずに生きていくんだ。

いつか大きな生物に食べられて
あっけなく人生が終わったって構わない。

どうせいつかは死ぬ。

魚も動物も人間も。
草花だっていつかは枯れる。

死は平等に与えられた権利なんだから。
恐る必要なんかない。

どうせいつかはやってくる、
抗えないシステムなんだから。
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