先生の金魚
教室に戻ってきたら、
貴重品以外の荷物は置いたままだったから
また朝とおんなじ席に座った。

隣にはもちろん紅さん。

相変わらず背骨が強化されたみたいな
真っ直ぐな背筋。

なのにブレザーの襟の首元が
ちょっと捲れている。

立ち上がって、
襟に触れたら紅さんは
ビクッて肩を震わせた。

「あ、ごめんね?襟が捲れてたから」

「えっ…あ、ごめんなさいっ!直してくれようとしたのに失礼な反応しちゃった」

「ううん。メグこそごめん。びっくりしちゃうよね」

ちょっと首を傾げて見せたことに
意味なんか何もない。
ただの演出。
ちょっとした愛嬌。
そうしていればきっと
メグは″怖い存在″ではなくなるから。
< 12 / 96 >

この作品をシェア

pagetop