先生の金魚
せんせーの声だけを聴いていたから、
他の生徒達や
サヨちゃんが名前を呼ばれた時のことを
メグはひとつも憶えていなかった。

そんなことは
どーでもよかった。

メグとせんせーの間に
付属品なんてなんにも要らない。

せんせーに
メグだけを見てほしかった。

もっと名前を呼んで。

誰よりも。
誰よりも。

せんせーの視線を独り占めにしたい。

クラスの全員に
せんせーが嫌われてしまえばいいのに。

そしたらせんせーの全部はメグだけのもの。

この日。
メグの命の指針が完全に定まった。

ココロの中心がどこに在るのかが
完全に分かってしまった。

ちょっと前のメグなら
メグ自身をきっとバカにしていたと思う。

なに言ってんだって。
出逢って数時間で
世界の何もかもを遮断してしまうなんて。

心から馬鹿げていると思う。

だけどメグは言い聞かせてた。
バカな自分を正当化する為に。

どうせ時間をかけた先に
こんな風にせんせーを好きになってしまう未来が変わらないのなら
時間なんて大した問題じゃないんだって。

だったら時間をムダにしちゃうほうが
もっと馬鹿げてる。

先手必勝。
恋だって、
きっとそう。
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