先生の金魚
由良(ゆら)ナツキ。

黒板に書かれた、
初めて見るせんせーの文字は
書道の先生みたいに美しい。

長い指に摘まれたチョークも、
指先に残る石灰の跡すらも妬ましい。

「せんせーい!イケメンは名前すら主人公感なんすねー」

茶化した男子にせんせーは
「きみ達はもーっと素敵なお名前ですよー」って言いながら
目を細めた。

メグが座ってる席は
窓側の後ろから二番目。

一番前に座ればよかったなって
人生で初めて思った。
そしたらもっと
せんせーのお顔を近くで見れたのに。

きっと、
まつ毛の一本一本まで。
< 18 / 96 >

この作品をシェア

pagetop