先生の金魚
せんせーの馴染みやすさのせいなのか、
もう「由良くん」とか
「ナツキ先生」とか呼ばれてる。

メグは声には出さないで
由良ナツキ、由良ナツキって
口の中で何回も繰り返した。

メグのくちびるが
″由良ナツキ″の形を、
音だけを覚えてしまえばいいと思った。

正午前には解散になった。

解散の号令がかかった瞬間に
せんせーはあっという間に
女子達に囲まれてしまった。

メグのなのに、なんて
思っちゃったのはただの立派な嫉妬で、
「メグのなのに」って本当に言ってしまえる資格が欲しい。

ちやほやされるせんせーを見てるのは辛いから
メグもさっさと教室を出ればいいのに
もう明日までせんせーに会えないと思うと
せんせーよりも先に
教室を出てしまうのが怖かった。
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