先生の金魚
「メグちゃん、おはよう」

翌朝。
登校したメグに最初に声をかけてくれたのは
サヨちゃんだった。

教室を見渡してすぐに気づいたけれど
みんなもサヨちゃんも
昨日とおんなじ席に着いている。

「おはよーサヨちゃん」

「あれ、メグちゃん」

「なぁに?」

「リップの色、昨日と違うね」

小さく首を傾げて、
サヨちゃんが目を細めて口角を上げた。

「すごい。よく気づいたね」

「うん。昨日はもう少しメープルみたいな色だったよね」

「そうだよー。今日はチェリーみたいな赤にしてみたの」

「どっちもすごく似合ってるよ」

「ありがと」

サヨちゃんが気づいてくれたことはうれしかった。
メグのこと、ちゃんと見ててくれてるんだって感じられるから。

せんせーも気づいてくれるかな。
ううん、男の人はこういう変化に鈍感かもしれないから
気づかないかもしれない。

気づいてても、
教師がそんなこと言うわけないし。

でもせめて、声には出さなくてもいいから気づいてほしいな。
メグは毎日毎日おんなじじゃないよ、ってこと。
せんせーにはいろんなメグを知ってほしいから。
< 25 / 96 >

この作品をシェア

pagetop