先生の金魚
「サヨちゃんってブルベだよね。しかも春。すっごく色白だからこういうリップ、似合いそう」

メグが自分のくちびるをスッて人差し指で軽く撫でたら
サヨちゃんは恥ずかしそうに俯いた。

「私はダメだよ。メグちゃんに似合う物が私に似合うわけない」

「メグに似合うんじゃなくてメグ達みたいな肌ベースの子達に似合うんだよ。だからサヨちゃんにも絶対に似合う」

「そ…うかな…」

「そうだよ。後で塗ってあげる」

「悪いよ!」

「いいから、いいから」

サヨちゃんはベースメイクだけをしているのか
すごくナチュラルだけど眉の形もきれいだし、
鼻筋もツンと通っていて、
くちびるもリップクリームできちんとケアしているのか
ツヤツヤだった。

ベースが整っているサヨちゃんは
ちょっとメイクをするだけできっとすごく美人になる。

こういう子を原石って呼ぶのかもしれない。

「あ、先生…」

サヨちゃんが言って、
メグはドアのほうを見た。

朝のホームルームの時間になっていた。
せんせーが教室に入ってきて、
女子達が「ナツキ先生おはよー!」って友達みたいに挨拶した。

今日のせんせーは昨日みたいなスーツじゃなかった。
ラフなTシャツの上にジャケットを羽織って、
下はセットアップのスラックス。

カジュアル過ぎない大人の男性って感じで
メグはまたドキドキした。
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