先生の金魚
うぅ…
メグってば勝手な妄想をして
疑心暗鬼になって先生の声すら遮断しちゃってたよ。

でも二回も。
名前を呼んでくれた。

体調悪いところ無いかって。
メグにだけ一言添えてくれた。

こんなの自意識過剰になるなって言うほうがムリじゃない?

″な行″からのお名前達は
全員、メグの脳内をかすめることもなく
通り過ぎてゆく。

他の子を呼ぶせんせーの声なんて
メグには必要ない。

メグのココロを乱すなら
全部雑音として消えてくれたらいいのに。

出席を取り終えたせんせーがパンッて手のひらを合わせて言った。

「じゃ、今から席替えするぞー」

その声に生徒達は大歓声を上げた。

席替えは日常の中の一大イベント。
誰の隣になるか、
教室のどの位置に自分の居場所が決まるかによって
一学期の学校生活が左右されるって言っても過言じゃない、はず。

メグだってうれしい。
いつもなら誰もが狙っているはずの、
教室の隅っこの席は
今のメグにとっては自分で選んでしまった地獄だった。

教卓の目の前。
みんなが嫌っている、
どうかあの席にだけはならないでと願っている場所を。

どうかメグに譲ってくださいっ!
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