先生の金魚
メグの手の中には
たった二枚からメグの意志で選択したくじが握られている。

まさに天国か地獄への切符だ。

「席順はランダムに振ってある。書いてる数字のところに移動するように」

メグ達がくじを引いている間にせんせーが黒板に描いた席順表を見る。
教卓の目の前は四番。

せんせーの誕生月。
″しあわせ″の″四″。

せんせーの誕生日を知っているのは
このクラスでメグだけだ。

それはまるでせんせーからのメッセージみたいに思えた。

教卓の目の前。
せんせーに一番近い場所。

メグに勝ち取れって言われているみたいだった。

「じゃ、みんな一斉に、くじを開いてー!」

一瞬静まり返った教室。
それからワッと響き渡る歓声。

「一番前回避!」だとか
「え!?隣?奇跡じゃん!」とか
「さいあくー!くじ運なーいっ」とか
いろんな声が飛び交った。

メグは…………メグの数字は…………

「三十番…」

自分の声がひどくかすれていて
おばあちゃんみたいだと思った。

三十番。

メグの席はさっきまでの席から一つ分、
せんせーから遠かった。
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