先生の金魚
でもね、メグは変わったんだ。

変えられた、って言ったほうが
正しいのかもしれない。

犯人は、せんせー。
あなただよ?

大きめの水槽に浮かぶ金魚を見つめながら
瞼を閉じて、その真っ赤な視界を遮断する。

せんせーとの思い出が
質量の重い愛情が次々と走馬灯みたいに通り過ぎてゆく。

ズシン、って重たくなる心臓が愛おしい。
指先でメグの感情に触れて。
もっと痛くして。

人を愛することって
全然おいしくないし、
笑ってるよりたぶん泣いちゃってたし
メグなのに全然可愛くなかったかもしれない。

でもね、せんせー。
メグはせんせーを好きでいることに
苦しくならなくなっちゃうことのほうが
ずっとずっと怖かったんだよ。

せんせーを忘れちゃうくらいなら
地球が滅んじゃえばいい。

存在も何もかも消えちゃえばいい。
どっちかだけが死んじゃうだけじゃダメなの。
片方だけが憶えて、生き続けるなんてダメなの。

好きでいることがこの世界では悪になるのなら
一緒に死のうよ。

消えちゃおうよ。
こんな世界から。
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