先生の金魚
今日は五時間目に
せんせーが担当の国語があった。

地獄みたいに長い一日だった。

堪えても堪えても
五時間目がやってこなく、
メグはこのまませんせーに辿り着けなくて
気が狂っちゃうかもしれないとさえ思えた。

現代文の授業だった。
せんせーが教科書に掲載されている小説の一部を読み上げる声だけに集中した。

許されるならスマホで録音して
目覚ましのアラームに設定したい。

サヨちゃんも今、
おんなじ気持ちであの場所に座っているんだと思うと
心底メグのくじ運の無さに腹が立ってくる。

サヨちゃんがあの席を勝ち取ったのは
最初から″選択する権利″を与えられていて、
しかもくじ運が強かったからだ。

サヨちゃんはなんにも悪くない。

メグの今の気持ちは(れっき)とした八つ当たりだから。

好きな先生の授業なら、
褒められたいからどの教科よりも成績が良くなるって言うけれど
メグは絶対に逆だと思う。

せんせーの声をただ聴いていたい。

教科書を読み上げる時の口の動かし方を、
チョークを摘むスッキリとした指先を
与えられた時間いっぱい、見つめていたい。

だからきっとメグの国語の成績は
地に堕ちるだろう。

せんせーの声をBGMにして
脳みそ溶かしているだけなんだから。
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