先生の金魚
「どうしたの?」

二人とも、スッと身長の高い男女だった。

「あー、一年生じゃない?」

「なんで分かるんですか」

「上靴の色」

「あ…」

学園は上靴や、
ジャージに刺繍されている名前の色が学年別になっている。

一年生が青、
二年生が緑、
三年生が黄色だった。

声をかけてくれた男女の上靴は黄色。
三年の先輩だった。

「先生を探してるの?」

女子の先輩が訊いてくれて
メグは頷いた。

「由良先生を…」

「あー、じゃあ八組なんだ?」

「はい」

「去年、私らもナツキ先生のクラスだったんだよ。ね?」

「そうそう。三学期になったら女子達がもう阿鼻叫喚でさ」

男子の先輩が笑って、
女子の先輩は「そこまで酷くなかったでしょ」って
男子の背中を(はた)いた。

「でも女子達がそれはもう悲しんだのはほんと。ナツキ先生はガチ恋教師だからねー」

「ガチ恋?」

「推しにガチで恋しちゃうオタクの心理ね。ファンでいるだけじゃ気持ちが抑えられないやつ」

「へぇ…」

メグの気持ちをその他大勢と一緒にしないでほしい。
他者から見たら結局メグだってあっさりせんせーに恋しちゃったようなもんかもしれないけれど
メグの初恋を奪った罪は重いんだから。

メグの恋の重力はとんでもないんだから。
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