先生の金魚
「でもさ、悪いことをして輪廻転生させられてまた苦しい世界に放り込まれて生きて、また苦しまなきゃいけないなら輪廻なんて全然良くないね」
「後悔先に立たずって言うけどさ」
「はい」
「もしも前世の記憶を受け継いだまま生まれ変わることができたなら、たった一度きりだって刷り込まれてる自分の命を、正しく救えるチャンスが貰えたなら苦しみのない世界に戻してあげたいって願う人は一定数いるんじゃないかな。生まれ変われるならどんなにいいだろう。やり直せるならどんなにいいだろう。でもそんなことはきっと夢物語だからせめて死んだ後くらいは幸せになれるように、イケナイことはしないでいようねって、気休めみたいなもんだよ」
「恋が無いのなら」
「うん?」
「メグは天国にも地獄にも逝きたくない。好きな人にもう二度と逢えないのなら」
「あらら。時枝ってば恋してるんですかぁ」
「秘密です!せんせー、もしもメグがいい子にしていたら天国に逝けて、輪廻転生してまた好きな人に出逢えるなら輪廻を信じていたいから、やっぱり廻って呼んでほしいな」
「なーんでだよ。好きな人に呼んでもらいなさいっ!」
分からず屋の、鈍感な、大人のせんせー。
死んでから後悔したくないから、
嫌な気持ちでいっぱいになってから
誰かを傷つけたり壊したりしたくないから
予防線を張りたいメグのこと、
ちょっとくらい甘やかしてよ。
気づいてよ。
メグの心臓が真っ黒になってしまう前に。
「ケチ」
「何がだよ」
「由良せんせーって案外頭がお堅いんですね!」
「はぁー?…あれ、てかお前はナツキ先生って呼ばないんだな、あいつらみたいに」
みんなが呼ぶから呼ばないんだよ。
その他大勢とおんなじなんて絶対に嫌。
その結果がたとえ当たり前の物になったとしても
人と違うならそれこそが特別になるんだから。
「真面目なので、メグは」
「なんだそれ」
掃除時間の終わりと、
帰りのホームルームを告げるチャイムが鳴った。
ほら、ってせんせーがメグの肩をゆるく押した。
人生最高温度まで上昇したみたいに熱を持った肩。
素肌じゃなくてよかった。
素肌だったらメグは確実に死んでいた。
もう一度せんせーと出逢えるかどうかも確信が持てないままで。
「後悔先に立たずって言うけどさ」
「はい」
「もしも前世の記憶を受け継いだまま生まれ変わることができたなら、たった一度きりだって刷り込まれてる自分の命を、正しく救えるチャンスが貰えたなら苦しみのない世界に戻してあげたいって願う人は一定数いるんじゃないかな。生まれ変われるならどんなにいいだろう。やり直せるならどんなにいいだろう。でもそんなことはきっと夢物語だからせめて死んだ後くらいは幸せになれるように、イケナイことはしないでいようねって、気休めみたいなもんだよ」
「恋が無いのなら」
「うん?」
「メグは天国にも地獄にも逝きたくない。好きな人にもう二度と逢えないのなら」
「あらら。時枝ってば恋してるんですかぁ」
「秘密です!せんせー、もしもメグがいい子にしていたら天国に逝けて、輪廻転生してまた好きな人に出逢えるなら輪廻を信じていたいから、やっぱり廻って呼んでほしいな」
「なーんでだよ。好きな人に呼んでもらいなさいっ!」
分からず屋の、鈍感な、大人のせんせー。
死んでから後悔したくないから、
嫌な気持ちでいっぱいになってから
誰かを傷つけたり壊したりしたくないから
予防線を張りたいメグのこと、
ちょっとくらい甘やかしてよ。
気づいてよ。
メグの心臓が真っ黒になってしまう前に。
「ケチ」
「何がだよ」
「由良せんせーって案外頭がお堅いんですね!」
「はぁー?…あれ、てかお前はナツキ先生って呼ばないんだな、あいつらみたいに」
みんなが呼ぶから呼ばないんだよ。
その他大勢とおんなじなんて絶対に嫌。
その結果がたとえ当たり前の物になったとしても
人と違うならそれこそが特別になるんだから。
「真面目なので、メグは」
「なんだそれ」
掃除時間の終わりと、
帰りのホームルームを告げるチャイムが鳴った。
ほら、ってせんせーがメグの肩をゆるく押した。
人生最高温度まで上昇したみたいに熱を持った肩。
素肌じゃなくてよかった。
素肌だったらメグは確実に死んでいた。
もう一度せんせーと出逢えるかどうかも確信が持てないままで。