先生の金魚
ホームルームが終わってから
すぐにサヨちゃんの席に向かった。

せんせーがサヨちゃんに
「気をつけて帰れよ」って言った。

ずるいと思った。
目の前に座っている特権だ。

メグを下の名前で呼ばないように、
教師としての平等を振りかざすのなら
「気をつけて帰れよ」も、
一人一人、全員に言うべきだと思った。

嫉妬。

心臓が重たい。

嫌になる。

「サヨちゃん、お母さん大丈夫だって?」

「うん。お昼には返事来てたよ。お友達に会えるの楽しみだって」

「そっかぁ。よかった」

「行こっか」

「うん」

サヨちゃんのおうちは学園から近かった。
徒歩で通える距離だった。
メグは電車で通っているから羨ましい。

玄関のドアを開けて
ただいまーってサヨちゃんが大きな声で呼びかけたら、
中からパタパタとスリッパの音が聴こえてきた。

「おかえりなさい…あー!いらっしゃいっ!待ってたのよ……まぁまぁまぁ小夜子ってばこんなに可愛い子とお友達だったの!?」

「もうやめてよお母さん。恥ずかしい」

「事実を言っただけじゃない!大丈夫?うちの子、大人しいし平凡だから…ご迷惑じゃないかしら」

「小夜子ちゃんはきれいだし沢山笑うし平凡なんかじゃないですよ。隣に居られて自慢です」

「まぁ…あなた心までやさしいのね」

「そんなことないですよ」

クスッて笑ったら
サヨちゃんが「恥ずかしいからもう行こうよ」って私の腕を引っ張った。

顔を赤くして
本当に恥ずかしそうだった。
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