先生の金魚
その場に居た生徒は全員、
教室に戻るように命じられた。

当然のように、
金魚混入事件の噂はあっという間に広まった。

一年八組の時枝迴がそばに居て
犯人として有力候補だったけれど
由良先生と会話していた。
それは由良先生本人が証言していて、
目を逸らした、たった一瞬での犯行は不可能だろう、と
学園に警察でも紛れているのかと思うほどの推理と共に
噂は学園中の興味を引いた。

幽霊でも存在しない限り、
メグにしかできない犯行なのに
誰もメグのことを疑わない。

「あんなに可愛い子があんなことできるわけない」

噂と一緒に囁かれた言葉。

くだらない。

どんなに容姿が良くったって
寝起きの顔が満点で可愛いわけじゃないし
人並みに排泄はするし
平気で逆恨みはするし
時には人だって殺すだろう。

顔だけで
メグは簡単に舞台から降ろされる。

主役にはなれない。

メグが何をやったって
天使に決まっていると口を揃えられて
結局一番印象がうすいのはメグで、
メグは大好きな人の為に、
小さい小さい世界史にすら名前を刻めない。
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