先生の金魚
本当はメグが″やってない″って、
一ミリも思っていないくせに
みんなの前でせんせーは嘘をついたんだ。

愛おしかった。
こんな愛情表現はないって思った。

メグとせんせーは
共犯者だ。

罪を隠し合った
共犯者。

心臓が壊れていく音が
はっきりと聴こえそうなくらいに痛んだ。

好き、好き好き好き、
大好きだよ、せんせー。

なのにせんせーは
鋭利な刃物で、
(いびつ)すぎる鈍器で
メグを切り裂いてグチャグチャに殴りつけて
メグの心を殺した。

「小夜子の為に言わない。でもお前は小夜子の為に俺に本当のことを話せ。これは脅しだ」

「脅し…?せんせー、なに言ってんの?」

「言っただろ。顔のいい女は嫌いなんだよ。世の中の全てが自分の思い通りになって、何をしても許してくれると思ってるだろ。世界中がお前の味方だってな」

「酷い偏見だしサヨちゃんだって美人です」

「あいつは顔だけの人間じゃない。心を知ってる」

「ますます身勝手ですね。それはサヨちゃんと過ごしてきた時間を振りかざした、メグへの立派な暴力です。メグを知ろうともしないで、せんせーの目の前の利己的な正しさだけを信じてメグを殺すんですね。どれだけ顔のいい女だって、苦しんだことが無いと思う?」

ふ、っと短く息を吐いて
せんせーは笑った。

嫌な笑い方だった。
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