先生の金魚
「あー、そうだな。確かに時枝は違うかもな。ご家族のこと、大変だっただろうし」

せんせーはメグの担任だから
家庭環境や中学の頃のメグのことも
少しは知っているんだと思う。

挑発するようなせんせーの目。

メグの心を傷つけたいって、
教師としては似つかわしくないその顔。

ゾクゾクするよ。

「それが″脅し″?」

「いいや?違う。お前がなんでこんなことするのか、さすがになんとなく分かるよ」

「じゃあなんでだと思う?」

「お前の目的は俺だ」

「ふふ。賢いですね」

「女の目。年齢なんか関係ない。嫌というほど見てきたよ。俺を好きにしたくてお前らは全員、同じ目をする」

「同じなんて言わないで?メグは違うよ。誰よりもせんせーのことが大好きなの」

「ふざけるなよ…。なんでバレないと思った?知ってるんだろ、俺と小夜子のこと」

「知ってるよぉ」

「聞いたよ、小夜子から。金魚のこと」

「金魚金魚って。せんせー達、金魚に取り憑かれてるみたいで気色悪いよ?なんかぁ、金魚だけが二人の繋がりみたいだね?」

「時枝…お前には人の心が無いのか…?」

「人の心?せんせーが私だけになってくれるのなら人間でいることなんて簡単に捨てられるんだよ」

「小夜子を傷つけることだけが目的じゃないんだろ?職員室でのことはなんだ?なんであんなことした?」

「金魚珈琲のことぉ?警告に決まってんじゃん」

「警告?」

「そう。せんせーの周りをちょろちょろしてたら不幸になるよって。本当に痛い目見る前に教えてあげたんだから優しいほうだと思うんだけど?」

「狂ってるよお前…」
< 76 / 96 >

この作品をシェア

pagetop