先生の金魚
恋をした。

メグの世界は一瞬で変わった。

長い指でドアを閉める。
ゆっくりと教卓まで歩く。

出席簿を教卓に置きながら
スッと息を吸う、うすいくちびる。

色素のうすいブラウンの髪の毛。
メグの髪色と似てるって思った。


シルバーのフレームに収まる切長の目。

「一年八組の皆さん。ご入学おめでとうございます」

微笑むとやさしく下がる目尻。

きっと授業には向かない、
わたあめくらいふわふわで軽い声。

安眠効果にしか繋がらないであろうその声しか、
もうメグの鼓膜には届いていなかった。

クラスメイト達がいつの間にきちんと席に着いたのかも分からない。

メグの脳はせんせーの言動しか認識できない、
ポンコツな機械になってしまったみたいに
せんせー以外を考えることを瞬時に放棄していた。

人間の脳にも容量が定められているのなら
本当に大切なこと以外に使うなんて勿体無い。

この人だけがいい。
この人だけになりたい。

メグの人生初の一目惚れは
劇的で劇薬で、メグをバカにした。
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