先生の金魚
溺れる
駆け足みたいに時間が流れて
夏が始まって、
毎日蝉の声にイライラした。

宿題には一つも手をつけなかった。

夏休み明けのことも
将来のことも
メグには関係ない。

夏休みに入るまで、
せんせーはメグを監視するような目を向けてきながらも
サヨちゃんのことは慈しむような視線で見守り続けた。

その視線が大きなバリアになって見える気がした。

一日ごとに
せんせーはメグを殺す。

せんせーがくれた甘い呪いは
確実にメグが人間であることから遠ざけていった。

八月十九日。

夏祭りの会場になる神社の前で
サヨちゃんと待ち合わせをした。

うすいクリーム色に
鮮やかな花火柄の浴衣を纏うサヨちゃんは
今まで見た中で一番きれいだった。

「メグちゃん…それ」

「うん。メグはねぇ、金魚だよ。夏っぽくて可愛いでしょ」

「ん……うん、そうだね。やっぱりすっごく似合ってる!可愛いね」

動揺するサヨちゃんの顔。

それが見たかったの。

メグはこれだけでもけっこう満足して、
サヨちゃんと腕を組んだ。

「行こっ!りんご飴食べたい」
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