先生の金魚
せんせーがお腹空かせてるかもしれないからと言って、
サヨちゃんは屋台でたこ焼きや唐揚げを買った。

せんせーも今頃サヨちゃんからの連絡を待って
ソワソワしてるのかな。

二度目のサヨちゃんのおうちは
確かに誰も居なくてシン、と静まり返っている。

その静けさは
メグのおうちとは違う。

湿っぽくない、
ただの″人が居ない″だけの静かさ。

「サヨちゃん、ワガママ言ってもいい?」

「なぁに?」

「シャワー借りちゃダメ?いっぱい汗かいちゃって。ほら、仮にもメグだってせんせーに恋してた身じゃない?あんまり汚いところ、見せたくないの」

「ふふ。そうだよね、私も同意。順番にシャワー浴びようよ。お先にどうぞ」

「お湯もためていい?」

「もちろん」

自分の家みたいに
お風呂場に行って、浴槽の蛇口を捻る。

電気はつけていない。
暗闇で蛇口からドバドバと流れる水が光っているみたいに浮き上がる。

ボーッと眺め続けた。

スッと気持ちが落ち着いてくる。

「メグちゃんっ!?」

サヨちゃんの声に、
顔を上げた。

いつの間にか浴槽から溢れ出した水で
足が濡れている。

「ごめん。お水見てたらボーッとしちゃった」

「遅いから心配した。大丈夫?」

「うん。ねぇ、シャワー浴びる前に渡したい物があるの」

足もちゃんと拭かないままで
サヨちゃんの腕を引いてリビングに戻る。

サヨちゃんは気づかないふりをしたけれど
″プレゼント″のことだって分かっていて
ちょっと浮き足立っているみたいだった。
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