先生の金魚
「はい。サヨちゃん、ハッピーバースデー」

紙袋を持ち上げて
サヨちゃんに渡す。

受け取ったサヨちゃんは
顔をくしゃくしゃにして笑った。

「メグちゃんありがとう。見てもいい?」

「もちろん」

紙袋の中からプレゼントを取り出して
広げてマジマジと見つめながら
サヨちゃんは感嘆の息を漏らした。

「わぁ…きれい…」

真っ赤なワンピース。
胸元はレースの刺繍があしらわれていて
普段着にするには派手過ぎるけれど
特別な日に着るのなら、
サヨちゃんの透けそうなほど白い肌にはよく似合うと思う。

軽い素材の生地も
胸元のレースも
揺れる金魚の鰭みたいだった。

「着てみてよ」

「今?」

「うん。見てみたい」

「んー、ちょっと待っててね」

「ここで。メグの前で着替えて」

「えっ…恥ずかしいよ」

「いいから」

「…分かった」

真夏の夜。
お誕生日。
日常では触れることのない真っ赤なワンピース。
サヨちゃんですら、
正常な判断を見失っている。

ゆっくりと浴衣の帯を外す。
はらりとはだけた浴衣から覗く白い胸。

細いウェスト。
スラリと長い手足。

せんせーは何度、サヨちゃんの素肌を思って
心臓を乱してきたんだろう。
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