先生の金魚
「きれい。サヨちゃん、世界一きれいだよ」

「そんなわけない…メグちゃんに言われたらお世辞が過ぎるよ…」

「信じてくれないの?本心だよ」

「……自分がきれいとか信じるのはまだ難しいけど…でもプレゼントは本当に嬉しい。早くこれを着れるようなお出掛けがしたいな」

「そうだね」

「……あっ、いけない!金魚…」

玄関の靴箱の持ち手に引っ掛けた、
ポリ袋に入ったままの金魚を思い出したサヨちゃんが慌てて玄関まで駆け出そうとした。

その腕を掴んで、
メグはサヨちゃんの頬に触れた。

「大丈夫だよ。一緒にアクアリウム、創ろうね」

「メグちゃん?」

腕を引いたままゆっくりと玄関に行って
金魚のポリ袋を持ってお風呂場へ。

電気をつける。
お風呂場に赤が三つ。

サヨちゃんみたいな金魚をすくったけれど
サヨちゃんはもう自分自身が金魚みたいになったから
この金魚はメグとせんせーだね。

「サヨちゃん。十六歳になったんだね」

「…うん?」

「せんせーとひとつ、近づけてよかったね」

「そうだね?」

「ひとつ大人になったサヨちゃんに、ひとつメグの秘密を教えてあげる。ううん、特別にふたつかな。最後だから」

「最後?」

「メグの親ね、死んだって言ったでしょ」

「うん…」

「殺したの。メグが」
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